刺されたら痒いマダニ!でも、場合によっては感染症を媒介する恐れもあるのですね。
こちらの記事では、マダニが媒介する病気・身を守る方法・刺された時の対処法などを紹介します。
マダニ被害が気になる方は、是非お読みください。

マダニはクモやサソリと同じ節足動物門に属し、一般にイメージされる昆虫とは異なり、成虫は脚が8本あります。
非常に小型ながら、吸血性が強く、動物や人間の皮膚に口器を差し込んで数日から数週間にわたって血を吸い続けます。
その最大の特徴は、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)やライム病など、ヒトやペットの命に関わる重篤な感染症を媒介することです。
生息域は山や森林だけでなく、都市近郊の草むらや庭にも広がっており、特に春から秋にかけて活動が活発になります。
体表が硬い外皮で覆われているため物理的な耐久性が高く、通常の殺虫剤が効きにくい場合がある点も、厄介な害虫として認識される理由の1つです。
マダニを発見した際には、無理に引き剥がさず、専門的な対処が必要とされます。
マダニが媒介する感染症の正しい知識
マダニによる健康被害で最も懸念されるのは、マダニが持つ病原体によって引き起こされる感染症です。
マダニの脅威に過度に不安を感じる必要はありませんが、正しい知識を持つことが自分自身や大切な家族・ペットを守るための重要な対策となります。
1. 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
マダニ媒介感染症として特に警戒すべきなのが、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)です。
SFTSウイルスに感染したマダニに刺されることで感染します。感染が確認されている地域は主に西日本ですが、全国で注意が必要です。
- 主な症状: 潜伏期間は6日~2週間程度。主な初期症状は、発熱(38℃以上)、倦怠感(だるさ)、消化器症状(食欲低下、嘔吐、下痢)などです。
- 重症化のリスク: 重症化すると、血小板や白血球の減少が見られ、多臓器不全に至ることもあります。致死率が高い感染症であるため、特に高齢者の方は注意が必要です。
2. ライム病
ライム病は、ボレリアという細菌によって引き起こされる感染症です。

※遊走性紅斑(ゆうそうせいこうはん)の画像例
- 主な症状: 刺されてから数日~数週間後に、刺し口を中心とした遊走性紅斑(ゆうそうせいこうはん)と呼ばれる特徴的な皮膚の赤みが広がります。放置すると、神経や関節、心臓に異常をきたすことがあります。
- 対処法: 早期に発見し、抗菌薬を投与すれば完治が可能です。
3. 日本紅斑熱・つつが虫病(※媒介マダニが異なる場合あり)
これらも熱性疾患を引き起こす感染症で、マダニやツツガムシによって媒介されます。

※ダニの刺した跡の画像例
- 主な症状: 突然の高熱、頭痛、全身の倦怠感が主で、日本紅斑熱では刺し口にかさぶた(痂皮)や発疹が見られることがあります。
マダニに刺されないための具体的な予防策3選
マダニによる被害を防ぐには、まず「マダニが生息する環境に入らない」「マダニを体に付着させない」という物理的な対策が最も重要です。
ここでは、野外活動や庭仕事をする際の予防策を3つご紹介します。
予防策①:活動時の「服装」徹底ポイント
マダニは、地面や草むらから衣服に乗り移り、肌の露出している部分や、衣服の隙間から侵入してきます。肌を露出させない服装が基本です。

| 項目 | 詳細な行動 | 理由・効果 |
|---|---|---|
| 肌の露出をなくす | 長袖・長ズボンを着用し、サンダルではなく靴を履く。 | 物理的なバリアを作り、マダニの肌への侵入を防ぎます。 |
| 裾の処理 | ズボンの裾を靴下や長靴の中にしっかりと入れる。 | マダニが地面から服の内部へ侵入する主要ルートを断ちます。 |
| 色の選択 | 白っぽい服装を選ぶ。 | マダニが付着した際、黒っぽい色よりも視認性が高くなり、早期発見につながります。 |
| 帽子の着用 | 頭部や髪の毛への付着を防ぐため、帽子をかぶる。 | マダニは上から落ちてくることは少ないですが、枝などから移動してくることがあります。 |
予防策②:効果的な「忌避剤」の正しい使い方と成分
物理的な防御を補うために、マダニが嫌がる成分を含む「忌避剤(虫よけスプレー)」を併用しましょう。
【選び方と使い方】
- 成分の確認: マダニ対策として効果が認められているのは、主に「ディート(DEET)」または「イカリジン(Icaridin)」を含む製品です。
- ディート: マダニに対して高い効果を発揮します。濃度が高いほど持続時間が長い傾向がありますが、使用回数や年齢制限があるため、用法・用量を守りましょう。
- イカリジン: 比較的低刺激で、子供への使用制限が少ない製品が多いです。服の上からも使用できます。
- 使用場所: 肌の露出部分と、マダニが侵入しやすい衣服の裾や袖口、首回りにムラなく吹き付けましょう。服の上からも使用できる製品を選べば、より安心です。
- 塗り直し: 汗などで成分が流れてしまうため、活動時間が長い場合は、記載された間隔でこまめに塗り直してください。
予防策③:帰宅後の「全身チェック」と対処法
どんなに完璧な予防をしても、マダニが服や体に付着している可能性はゼロではありません。帰宅後にはしっかりチェックして除去しましょう。
【帰宅後の全身チェック】
- 玄関で服を脱ぐ: 野外で着ていた服や帽子は、室内に持ち込む前に玄関で脱ぎ、すぐに洗濯するか、乾燥機にかけましょう。
- すぐに入浴: シャワーではなく、湯船にゆっくり浸かることで、体に付着したマダニを洗い流し、刺されていないかを確認します。
- 重点チェック部位: マダニは皮膚の柔らかい部分や、目立たない場所を好みます。特に、耳の裏、脇の下、股(太ももの付け根)、膝の裏、髪の毛の中などを、鏡を使って念入りにチェックしてください。
- ペットのチェック: 一緒に活動した犬や猫などのペットも、全身(特に顔の周りや耳の中、足の指の間)を優しく撫でながら確認しましょう。
マダニに刺されてしまった時に「やってはいけないこと」
もし、マダニが皮膚に食い込んでいるのを発見しても、決してパニックにならないでください。重要なのは、「正しい処置を知り、落ち着いて行動すること」です。
ここでは、マダニに刺された時に絶対に避けるべきNG行為を解説します。これらの行為は、かえって感染リスクを高めることにつながります。
NG行為①:無理に引き抜く・ちぎる
マダニは、皮膚に口器(こうき)という吸血のための器官を深く差し込み、セメントのような物質を出してしっかりと固定しています。

※皮膚に潜り込むダニの画像
なぜダメなのか?
- 無理に引っ張ると、マダニの頭部や口器の一部が皮膚の中に残り、炎症や化膿の原因となります。
- マダニを刺激したり圧迫したりすることで、マダニが体内にある病原体を逆流させ、感染症のリスクを高めてしまう可能性があります。
NG行為②:つぶす、叩きつける、熱で焼き切る
マダニを物理的に破壊しようとしたり、熱を加えたりする行為は危険です。
なぜダメなのか?
- マダニの体を潰したり、熱したりすると、マダニの体液や糞の中に含まれる病原体が体内に放出され、感染のリスクを非常に高めてしまいます。
- 特に火を使う行為は、皮膚に火傷を負う危険もあります。
NG行為③:アルコールや油を塗る
刺されたマダニを窒息させて取ろうとして、アルコール(消毒液)、灯油、ワセリン、タバコの火などをマダニに押し当てる行為も一般に推奨されていません。
なぜダメなのか?
- これらの刺激により、マダニが嘔吐したり、唾液を大量に分泌したりすることがあり、この時に病原体が体内に押し込まれるリスクが高まります。
安全で正しいマダニの除去方法
マダニが皮膚に食い込んでいるのを発見した際、前述の通り、無理に引き抜く行為は絶対に避けるべきです。最も安全なのは医療機関を受診することですが、すぐに受診できない場合の応急処置として、マダニ専用の器具を使った除去方法があります。
1. 医療機関(皮膚科・外科)での除去を強く推奨します
マダニの口器を皮膚内に残さず、感染リスクを最小限に抑えるためには、医療機関を受診し、専門医に除去してもらうことが強く推奨されます。
- 受診のメリット: 医師は専用の器具(マダニ除去鉗子など)を使用し、口器を完全に除去できます。また、刺された後の経過観察や、感染症予防のための処置・アドバイスも受けられます。
2. やむを得ず自宅で除去する場合(応急処置)
すぐに病院に行けないなど、やむを得ない場合に限り、以下の手順で慎重に除去を試みます。ピンセットや指で無理に引き抜くのはNGです。
【準備するもの】
- マダニ除去専用器具: ダニ除去フックやピンセット(先端が細く尖ったもの)
- 消毒液(アルコールなど)
- 手袋(可能であれば)
【除去の手順】
- 器具を準備: 手を清潔にし、器具を準備します。
- 根元を掴む: マダニの体ではなく、皮膚に食い込んでいる口器の最も根元に近い部分を、器具でしっかりと掴みます。
- ゆっくり引き抜く: マダニを垂直方向に、一定の力で、ゆっくりと引き抜きます。この際、マダニの体をねじったり、引っ張ったり、潰したりしないように細心の注意を払ってください。
- 確認と消毒: マダニの口器が皮膚に残らず、完全に除去できたかを確認します。その後、刺し口の周りを清潔な水と石鹸で洗い、消毒液で消毒します。
- マダニの保管(推奨): 除去したマダニは、潰さずにビニール袋などに密閉して保管しておくと、後に病原体の検査が必要になった際に役立つことがあります。
3. 除去後の対応
マダニを除去できたとしても、数週間は体調に変化がないか注意深く観察することが非常に重要です。
- 症状の観察: 発熱、頭痛、倦怠感、刺し口の周りの異常な赤み(紅斑)がないか確認しましょう。
- 医療機関へ: 除去後であっても、これらの症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。その際、「いつ、どこで、マダニに刺された(または除去した)」という情報を正確に医師に伝えるようにしましょう。
庭や敷地内のマダニ発生源を断つ環境対策
マダニは山や森だけでなく、意外と身近な自宅の庭や敷地内にも潜んでいます。特に、草木が生い茂った場所や湿気の多い環境は、マダニにとって絶好の隠れ家です。
マダニの脅威を遠ざけるには、環境をマダニが住みにくい状態に整備することが根本的な対策となります。
1. マダニが潜む草木の整備を徹底する
マダニは地表から50cm〜100cm程度の草の先に潜み、通りかかる動物や人間に乗り移る機会をうかがっています。
| 行動 | 詳細なポイント | 効果 |
|---|---|---|
| 定期的な草刈り | 庭や敷地の周囲の雑草をこまめに刈り、地表近くの湿気を減らす。 | マダニの隠れ場所と、活動する足場をなくします。 |
| 落ち葉の除去 | 庭の隅や植木の下に溜まった落ち葉や枯れ草を掃除し、処分する。 | 落ち葉の下はマダニが越冬する格好の場所です。 |
| 芝生の管理 | 芝生も短めに刈り込み、常に乾燥した状態を保つようにする。 | 芝生にいるマダニがペットや子供に付着するリスクを減らします。 |
2. 敷地内に日光と風を通す
マダニは、乾燥に弱く、日光が当たりにくい湿度の高い場所を好みます。
- 風通しの確保: 庭木や植え込みの枝を剪定し、日光が地面まで届き、風が通るようにしましょう。これにより、地面の湿度を下げ、マダニにとって住みにくい環境になります。
- 不要物の撤去: 庭に放置された廃材や石、古いタイヤなども湿気を溜めやすく、マダニの隠れ場所になります。これらを片付けることで、潜伏場所を減らしましょう。
3. 害獣を敷地内に入れない対策も重要
マダニは、イノシシ、シカ、タヌキ、キツネなどの野生動物(害獣)や、ネズミなどの小型の害獣にくっついて移動し、自宅の庭に持ち込まれるケースが非常に多いです。
- 侵入経路の確認: 敷地のフェンスや基礎部分に穴がないか確認し、害獣が簡単に入れないようにする。
- 餌となるものを撤去: 生ゴミやペットの餌などを外に放置せず、害獣を寄せ付けない環境を作ることが、間接的なマダニ対策になります。
これらの環境整備を徹底することで、マダニの発生リスクを大幅に下げます。
しかし、草刈りや落ち葉掃除をしてもマダニの発生が収まらない場合や、そもそも野生動物の侵入を止められない場合は、個人での対策には限界があります。この場合は、次の項目で解説する専門家への相談を検討しましょう。
解決できない場合は専門の駆除業者も検討
庭や敷地内の環境整備はマダニ対策の基本ですが、次のような状況では、個人での対策には限界があり、専門家の力が必要になります。
1. 専門業者に相談すべきケース
| 状況 | 専門家が必要な理由 |
|---|---|
| 広範囲でのマダニ発生 | 庭が広い、または周辺環境(隣接する山林、畑など)の影響でマダニの数が異常に多い場合。 |
| 害獣の侵入が続く場合 | アライグマ、タヌキ、イタチなどの野生動物が敷地内に頻繁に出入りし、マダニを持ち込んでいる場合。 |
| 感染症の不安が強い場合 | SFTSなどの感染症のニュースを見て、より徹底した環境管理を求めたい場合。 |
2. なぜ害獣駆除の専門業者がマダニ対策に役立つのか
❶ マダニの「運び屋」である害獣をシャットアウト
マダニの発生源を断つためには、マダニを運んでくるネズミやアライグマなどの害獣の侵入を防ぐことが最も確実です。
害獣駆除のプロは、侵入経路の特定と封鎖、捕獲、そして再発防止のための環境整備を得意としています。根本原因を断つことで、マダニの発生リスクを大幅に下げることが可能です。
❷ 専門的な薬剤による広範囲の駆除・消毒
市販の忌避剤や殺虫剤では対応できない広範囲の草木や地面に対して、プロならではの効果的で安全性の高い専用の薬剤散布を行うことができます。これにより、既に潜んでいるマダニの数を一気に減らすことが可能です。
❸ 環境改善のアドバイス
マダニや害獣が住みつきにくい庭の構造や、今後の維持管理方法について、プロの視点から具体的なアドバイスを受けることができます。
害虫駆除のおすすめ業者に関しては「害虫駆除の優良業者おすすめ9選!料金相場と失敗しない選び方」の記事で紹介していますので、よろしければご確認ください。

こちらでダニの駆除に関する情報を発信しています。是非、こちらの記事もご覧ください。





